The end of company ジエン社 第11回公演『夜組』(1/13~)
公演情報
2017.01.7
夜に起きるようになってしまってから、数か月経つ。
起きるのはたいてい、相撲中継が終わったあとだ。夏の間はそれでも日が差している時間もあったが、この季節になると寒さとともに、街は喪に服したような昏さになる。
川の近くの街だ。
電力は制限される前から、この街の夜はもともと昏い。この昏さの中、『死んでるさん』と呼ばれる死者が徘徊していると聞いたが、俺はいまだに出くわしたことのない。
川の近くに、キリン型の鉄塔がある。
そのキリン型の鉄塔の近くに、携帯型ラジオを持っていく。夜、その鉄塔の付近でのみ、声を拾えるラジオがあるのだ。俺はその声を聴きに行く。
「家族! ……本当の家族には言えないあなたの日常を送ってください。採用された方には、ひょんめんみゃんもんすう、もうぺんはるもにあ、あごす、よごるよごろてりあ、まくろまふすう……」
深夜のラジオだ。時々、人間ではない違う生き物の言葉も入ってくるのは、この鉄塔が気持ち悪いせいだと思う。
「本当の家族には言えないあなたの日常」を送るという、そういう趣旨のコーナーにもかかわらず、投稿リスナーたちは次から次へと、ありえないシュールな日常を送ってくる。投稿のあまりの狂いっぷりに、パーソナリティの二人は笑い続ける。狂った言葉と、笑い声が、死体の匂いのする川の、小さい範囲に響いている。なぜこのラジオは、ここで聞けるのか。そもそも電力が制限されている中、深夜に聞けるラジオなんて、どうして存在できるのだろう。こんなに人が死んでいるさなか、どうして俺はまたここに、ラジオを聞きに来たんだろう。
向こう側で、誰かがこっちを見ている。昏くてよくはわからない。見ることはできない。ただ、存在するときに立てるわずかな音と、気配で、
何かがいるようなことだけはわかるのだ。
俺は思った。あいつも、俺も、「夜組」なんじゃないか、と。
脚本・演出:山本健介
出演:伊神忠聡、兎洞大、蒲池柚番、寺内淳志、中野あき(ECHOES)、由かほる(青年団)、高橋ルネ(ECHOES)、善積元
■日程:2017/1/13[金]~1/23[月]
■会場:東京・池袋シアターKASSAI
■料金:
前売3400円、当日3900円、高校生割引1000円
※高校生割引は要学生証・要予約
■上演時間:1時間30分(予定)