演劇最強論-ing

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The end of company ジエン社 第12回公演『物の所有を学ぶ庭』(2/28~)

公演情報・チケット販売

2018.01.26





あなたは私の、ものなのですか。ものは私の、あなたなのですか。私のものは、だれかなのですか。

長いあらすじ 

私達は彼らを「妖精さん」と呼んでいるのだけれど、それは正式名称ではなくて。

妖精さんはある時から、一人、また一人と、この世界に、この国に出現し始めた。今、この庭に仮住まいしている妖精さんは二体で、男女で、二人は兄妹らしい。詳しい事はよくわからない。でも、このまま妖精さんがこの街に住むのは、きっと難しいのではないかなと思う。
妖精さんは我々とコミュニケーションは取れるし、頭だっていい。きっと私たちの言っている事は伝わっている。意味としても言葉としても。でもそれでも、妖精さんたちは「所有」という事が、やっぱりわからないみたいで、万引きだったり、無断で人の物を持ち帰ってしまったり、冷蔵庫の中のおやつをパクパク食べたりしてしまう。
だから私は高校教師だった時の事を思い出しながら一つ一つ、まずは「所有」について、妖精さんたちに教えている。
「名前が書いてあれば」と男の妖精さんは言った。

「分かります。物に、名前がついているという事は、触ってはいけないという事が。なぜ触ってはいけないのかまでは、実はわかりません。すみません。でも、そういう文化なのだといわれたら、それは、そうか、私たちにとっては、聖域にある石と同じような存在なのでしょう。名前が書いてある物に関しては、わかりました、私たちは触らないようにします」

私は、触ってもいいんじゃないか、とは思った。名前が書いてある他人の持ち物に、触ることそのものが悪いのではない。他人の所有物を、尊重しないというか、尊重? 所有とは、尊重のことだろうか? たとえば今私が彼の着ている服を、同意なく脱がせて、奪い取って、持ち帰るのはおかしなことだ。いけない事だ。でも、彼の服に、からだに、私の手が触れる事、それは、そんなにいけない事なのだろうか。

「ハリツメさんには、名前が書かれていない場合の、“物の所有”の見分け方を教えてほしいのです。距離の要素が大きい事は、わかりました。手にしている、身につけている、というものほど、それは“所有”されているのだ、と。でも、時に手を離れて、距離が遠くなっているものも、“所有”されている、ということが、分かりません。物が身体から遠くなったら、それは所有ではないものではないのですか?」

そして妖精さんの彼は、私の体を触る。私は、嫌だ、と言わなくてはいけない。妖精さんは悪気なく、敬愛を込めて私の顔や、肩や、胸を触る。

「あなたには名前が書かれていない。あなたは、触ってはいけない、と言う。名前が書かれていないのに、触ってはいけないのは、なぜですか。」

触られながら私は、なぜだろう、なぜかしら、と考える。どう、教えたらいいだろう。
私の体は、私の物だという事。社会的には、もうあの人の物だという事。お嫁にもらわれた、ということ。もらわれた、という私は、物なのか。人ではないのか。人は、物なのか。あの人の物になって、他の誰にも触られてはいけない私が、いまこうして髪を触られている事は、どうしてよくない事なのか。私はそんな事、教えてもらわなかった。学んでこなかった。教えてほしい。知りたい、学びたい。

私は教師だったのに、何でこんなにわからないんだろう。


作・演出:
山本健介
出演:
伊神忠聡、上村聡(遊園地再生事業団)、蒲池柚番、鶴田理紗(白昼夢)、
寺内淳志、中野あき、湯口光穂(20歳の国)、善積元

■日程・会場:
2018/2/28(水)~3/11(日)
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*下記公演では山本健介とゲストによるアフタートークあり
3/1[木]19:30 佐々木敦氏(批評家・HEADZ主宰)
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■会場:
東京・ BUoY

〒120-0036 東京都足立区千住仲町49−11(墨堤通り側入口)
東京メトロ千代田線・日比谷線/JR常磐線/東武スカイツリーライン「北千住」駅出口1より徒歩6分、西口より徒歩8分


■料金:日時指定・全席自由席
一般:3000円、18歳以下割引:1000円(要予約・身分証)
※当日券は+500円
※さらに当日、別途1ドリンク(500円)のご注文をお願いいたします


「演劇最強論-ing」でチケット取扱!2018/1/28[日]10:00~一般発売!
チケットのお申込は下記ボタンから。

ジエン社

私たちが集まるのは、もうこれが最後。The end of company ジエン社です。かつて“早稲田最後のパフォーマー”を自称していた作者本介が、2002年に早稲田の路上で旗揚げされた総合表現ユニット「自作自演団ハッキネン」を、演劇活動により特化する形で2007年10月に改称し、新たに作られた演劇ユニット。すでに敷かれている現代口語演劇の轍を(いやいやながら仕方なく)踏みながら、いつかそこから逸脱して「やる気なく存在し続ける現在」を、演劇ならではのやり方で出現させてみようと模索している。メンバーは現在、脚本演出担当の山本健介のみ(第8回まで作者本介名義)。 ★公式サイトはこちら★