【連載】ひとつだけ 藤原ちから編(2018/02)― きくたびプロジェクト 横浜美術館コレクション編
ひとつだけ アーカイブ
2018.02.21
あまたある作品の中から「この1ヶ月に観るべき・観たい作品を“ひとつだけ”選ぶなら」
…徳永京子と藤原ちからは何を選ぶ?
2018年2月 藤原ちからの“ひとつだけ” きくたびプロジェクト 横浜美術館コレクション編
対象展覧会:「横浜美術館コレクション展 全部見せます!シュールな作品 シュルレアリスムの美術と写真」
会期:2017年12月9日(土) ~ 2018年3月4日(日)
今年もTPAM(舞台芸術ミーティングin横浜)が終わった。ちょっとだけ寂しいような、ホッとしたような……。今年は観劇よりもミーティングを中心に、できるだけまったり過ごした。将来この人と一緒に何かやりたいな、一緒に生きていきたいな……そう思えるような、同時代の、世界の仲間たちを探せるのが、TPAMの良いところだと思う。
ところで、TPAMがフェスティバルではなくて、実はマーケットですらなくて、ミーティングの場である、というのはとても重要なことだ。個々の作品はもちろん大事だけど、とはいえ、ただ単に作品を観れば(観せれば)それでいいという時代ではなくなったのではないか。作品は、もはや完結した「作品」としてのみ消費されるものではなくて、今では、その前後の時間へと接続するための媒介物のようになっている。作品を通して、観客であるわたし/あなたは、歴史に繋がり、未来を構想する。作品はそうやって、その作品に吸い寄せられるようにして集まってくる人々の日常と、ゆるやかに繋がっていく。
ヨコハマアートサイトのラウンジ「まちとアートの仲人たち」 写真:ヨコハマアートサイト事務局提供
最終日に開催されたヨコハマアートサイトのトークイベント「まちとアートの仲人たち」は、そういう今の流れを感じさせてくれる内容だった。登壇した4人(左から宮永琢生、宮武亜季、横井貴子、石神夏希)のうち3人はいわゆる制作者と呼ばれる仕事をしてきた人たちだが、もはや制作者とアーティストの境界も溶けているかのようだ。制作者であれ、アーティストであれ、もしかしたら批評家であれ、とにかく創作意欲のある人間が、作品や場所を生み出していく。いたってシンプルな話だ。小豆島で。東京で。国内外のあちこちで。それらひとつひとつの活動を「演劇」と呼ぶかどうかは場合によりけりだけど、少なくとも、彼らが、演劇的な発想や手法を、自分たちの活動に取り込んでいるのは間違いない。
こうやって、「演劇」は拡張していく。
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横浜美術館で開催されている「きくたびプロジェクト」も、そうやって為された「演劇」の拡張した例のひとつだと思う。俳優の大石将弘、北村美岬、山内健司が作家として参加した音声ガイドツアー。この顔ぶれに、そして音声ガイド、という仕組みに、ピンと来た人もいるかもしれない。彼らは象の鼻テラスでままごとの柴幸男たちによって開催されてきた「シアターゾウノハナ/THEATER ZOU-NO-HANA」のメンバーとして、やはりそこでも音声ガイドのツアーをつくっていた。それを、「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」の鄭晶晶さんが見つけて、面白がり、じゃあ美術館でやりましょう、となったのが、このプロジェクトらしい。彼らは、劇場外の空間において、どのように演劇が機能しうるかを実験してきた。今回の「きくたびプロジェクト」もまた、そんなトライの延長にある。美術館の中に、どんなふうに演劇的発想をインストールできるのか。
「きくたびプロジェクト」 写真:中島佑輔
けれども、ウェブサイトを見たものの、今ひとつどう参加したらいいのかわからなかったので、作家である大石さんと、「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」の林建太さんが出演したラジオ番組を聴いてみた。結果、わかった手順を、以下に書き出してみる。
(1)みなとみらい駅の近くにある横浜美術館に行く。
(2)「コレクション展」のチケットを買う。
(3)実はスマフォとイヤホンが必要。でも、ない人は会場でMP3のデバイスを借りることも可能。
(4)会場マップを美術館でゲットしてね。
(5)好きな展示室に行ってネットにアップされてる音声を聴く。
そう、実はYoutubeに音声がアップされているのだった。例えばこんな感じで。
でもきっと、実際その場に行って聴くほうが面白いはずだから、わたしは現地で聴きたい。すでに会期は始まっているけれど、2月25日には「きくたびプロジェクト体験&アフターセッション」も開催されるし、コレクション展の会期は3月4日まであるから、今からでも遅くないと思う。ちなみに2月25日のセッションは、
11:30~12:30 体験パート ※特に未体験の方にオススメ
13:00~13:30 トークパート(プロジェクトメンバーのトーク)
13:30~14:30 セッションパート(参加者同士のミーティング)
という感じで行われるみたいで、すでに申込締切は過ぎているけれども、まだ参加可能かも、とのことなので、興味のある人は kikutabi.project@gmail.com まで問い合わせてみてください。
本当は、TPAM期間中に紹介できたらよかったのかもしれないけど、キツキツのスケジュールでハシゴするよりも、たぶん、1日のんびり横浜で過ごすか〜、と心に決めてじっくりのんびり参加するほうが、きっと響く企画だと思う。展示されている美術作品の多くも、鑑賞者にスッと通り過ぎられるより、その場で佇んで対話してくれることを望んでいるだろう。
「きくたびプロジェクト」 写真:中島佑輔
P.S.
どうしてもハシゴしないと気が済まない欲張りなあなたは、手前味噌ですが、わたしが仲間たちとつくった『演劇クエスト・横濱パサージュ編』とのツアーハシゴをどうぞ。オススメは、
(A)桜木町駅観光案内所で「冒険の書」を手に入れ、短編No.1「不思議な手紙」をプレイしてから美術館に向かうコース。
(B)横浜駅観光案内所で「冒険の書」を手に入れ、東口からシーバスで「ぷかり桟橋」へと向かい、短編No.11「時の旅人」をプレイしてから美術館に向かうコース。
TPAMは終わったけれど、まだプレイできます。
「演劇クエスト・横濱パサージュ編」 写真:住吉山実里