【連載】ひとつだけ 藤原ちから編(2017/04)― 『SCOOL!!OPEN!!!PARTY!!!!』
ひとつだけ
2017.04.6
あまたある作品の中から「この1ヶ月に観るべき・観たい作品を“ひとつだけ”選ぶなら」
…徳永京子と藤原ちからは何を選ぶ?
2017年04月 藤原ちからの“ひとつだけ” 『SCOOL!!OPEN!!!PARTY!!!!』
2017/4/8[土]~4/9[日] 東京・SCOOL
この4月、新しいアートスペースSCOOLが東京・三鷹にオープンする。吾妻橋ダンスクロッシング(主宰・桜井圭介)とHEADZ(主宰・佐々木敦)の共同プロデュースによるもので、2年前の『コルバトントリ』を最後に「流浪」を続けていた、あの清澄白河SNACの事実上の生まれ変わりである。
SNACはどんな場所だったか? そこは、思いついたことはほぼなんでもやっていい場所であった。いわゆる貸し小屋のような膨大な費用もかからないので、とりあえずやってみる、という無謀な試みができたのである。わたし自身、トークイベントを開催したり、謎の演劇作品(?)に出演したり、あるいは観客として、何度も足を運んだ。そして終演後は近所の老舗居酒屋「だるま」に流れて、終電ギリギリまでいろんな人たちと語り合うのが常だった。
今わたしが、批評もやり、みずから創作もするという、なんだかよくわからないアイデンティティを持って活動しているのは、きっと、このSNACでの「デタラメ」な経験なしにはありえない。あの場において、批評家であるかアーティストであるかはさほど問題ではなかった。さらには演劇かどうかというジャンルもさして重要ではなかった。あの白い壁に囲まれた空間の中で(あるいはその外を使って)何をやるか? ……ただそれだけが問われたのである。やった結果に対しては、SNACの主(?)である桜井圭介氏から厳しいコメントをいただくこともしばしばあった。しかし、少なくともやる前からあれはダメだこれはダメだと言われることは、ほぼなかったと記憶している。
別の言い方をすれば、SNACは「怪我をできる」場所でもあった。例えばあるトークに呼ばれて出演した際には、観客がたったひとり、しかも関係者……というありえない状況に直面した。これはいったい誰に向けて喋ってるんだろう? そう思いながらも、わたしは不思議と清々しい気分になり、そのシュールな状況と会話を楽しんだのである。これに限らず、(告知努力はしたとはいえ)総じて集客にピリピリしなくていいのは、金も知名度もなく、でも時間とやりたいことだけはある身にとって、本当にありがたいことだった。
昔話をしたくてこんなことを書いているわけではない。SNACはもう過去のものになってしまったが、その転生であるSCOOLはこれから新たに生まれてくるのだから。そしておそらくその性格は、SNACの「デタラメ」な理念を継承したものになるだろうし、その門戸は様々な人々にひらかれることになるだろう。
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飴屋法水、core of bells、福留麻里、グルパリ(以上8日)、古川日出男、大谷能生、KENTARO!!、おまつとまさる氏、東葛スポーツ(以上9日)ら、豪華メンバーによる2日間の「SCOOL!! OPEN!!! PARTY!!!!」は当日券アリの予定(https://twitter.com/mitakaSCOOLをチェック)。その後も、鴻英良のレクチャー「猿の演劇論 特別編」、手塚夏子のワークショップ&レクチャー、detune.、かもめマシーン、こq、など魅力的な企画が続く。
≫ 『SCOOL!!OPEN!!!PARTY!!!!』 公演情報は コチラ