【連載】ひとつだけ 藤原ちから編(2016/1)―岡崎藝術座『イスラ!イスラ!イスラ!』
ひとつだけ
2015.12.31
あまたある作品の中から「この1ヶ月に観るべき・観たい作品を“ひとつだけ”選ぶなら」
…徳永京子と藤原ちからは何を選ぶ?
2016年1月 藤原ちからの“ひとつだけ” 岡崎藝術座『イスラ!イスラ!イスラ!』
≪東京公演≫2016/1/9 [土]~17[日] 早稲田小劇場どらま館
≪横浜公演≫2016/2/3 [水]~8[月] STスポット
*横浜 2/6~2/8の13:00の回は、前作『+51 アビアシオン,サンボルハ』を上演いたします。「人々の移動と他者の集まる社会」というテーマのもとに新作と兄弟的な作品に位置づけられます。
【photo: Takuya Matsumi/『イスラ! イスラ! イスラ!』京都公演より】
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2015年は演劇シーン全体として骨太の作品が多く、国際共同制作やコラボレーションなど大掛かりなプロダクションのものが成功していたように思うが、それはそれとして新年は、仮に小劇場の規模であっても、作家個人の巨大な幻視能力でこの世界に立ち向かっていくような作品をもっと観てみたいと思っている。
というわけで新年1月の「ひとつだけ」は、岡崎藝術座『イスラ!イスラ!イスラ!』を。
作・演出の神里雄大氏へのインタビューでも大いに語っていただいたように、この作品は、森小弁やジョン万次郎など、かつて海を渡った人々の足跡を追っていく中で生まれた。小笠原、高知、ミクロネシア、ハワイなど、太平洋をめぐる壮大な想像力を基盤にした、ある「島」の物語である。
すでに熊本や京都で上演されており、このあと東京・早稲田小劇場どらま館と、横浜STスポットでの公演が控えている。わたしはまだ戯曲しか読んでいない。で、ひとつ気がかりなのは、ほぼ一人称で語られる怒涛の長ぜりふを、いやテクストとしては面白いのだが、いったいどうやって具体的な空間と俳優による「演劇」として立ち上げるのだろうか? ということ。
キャストは小劇場界ナンバーワン巧者の武谷公雄、岡崎藝術座でもたびたび好演している稲継美保、そしてチェルフィッチュ台頭期を支えてきた松村翔子など精鋭揃いなので、なんとか成立しているのだろう、と想像しつつ、でもこれだけの俳優がいるのだから期待の200%越えくらいで来てほしいとも思うし、なんといっても長年にわたってわたしの想像力を凌駕しまくってきた岡崎藝術座なのだから、いっそのこと、「新たな話術スタイルの確立だ!」などと騒ぎ立てたくなるようなところまで演出的に到達しててほしいなと願っています。
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