【特集『もしもし、こちら弱いい派 ─かそけき声を聴くために─』】
「強い」「速い」「大きい」「合理的」という価値感から遠く離れて、 要注目の才能達は、弱さの肯定から世界を見つめる(徳永京子)
特集
2021.07.21
共通する時代の“しるし”を取り込んだ、個性バラバラな3劇団。
「弱いい派」とは何かの答えが、ここにある。
東京芸術劇場では2009年から、多くの人に知ってほしい若手団体をピックアップする「芸劇eyes」を毎年実施してきた。「芸劇eyes番外編」は、さらに若い才能を紹介するシリーズであるのと同時に、共通する時代の“しるし”を持つ団体をショーケース形式で上演するもの。その趣旨から開催は不定期で、今回はなんと8年ぶり。
そんな第3弾『もしもし、こちら弱いい派─かそけき声を聴くために─』は、ここ数年、シンクロニシティのようにさまざまな場所で起きている“弱さの肯定”が共通点の3団体、いいへんじ、ウンゲツィーファ、コトリ会議が参加する。“弱さの肯定”とは、今の時代を環境的にも内面的にもストレスなく生きていけるグループに属さない人達が、従来の勝ち負けや速さや声の大きさといった価値観をすり抜け、とりあえず明日を生きていこうとするささやかにポジティブな姿勢。それを演劇作品として創作する人々を「弱いい派」と名付け、集まってもらった。そして、すり抜ける方法が見事にバラバラの3作品が完成。一体どんな団体なのか、どんな作品を上演するのか、作・演出家3人のインタビューを読んで期待を膨らませ、残り少ないチケットを入手して観てほしい。
芸劇eyes 番外編『20年安泰。』/ロロ『夏が!』(2011年)【撮影:田中亜紀】
ちなみに「芸劇eyes番外編」の第1弾は2011年、ネットネイティブ世代が演劇に台頭してきた動きに着目した『20年安泰。』で、参加団体はTHE END OF COMPANYジエン社、バナナ学園純情乙女組、範宙遊泳、マームとジプシー、ロロ。第2弾は2013年、それまでの女性演劇作家と異なる性、社会との距離感を持ったつくり手に注目し、『God save the Queen』というタイトルで、うさぎストライプ、タカハ劇団、鳥公園、ワワフラミンゴ、Qを紹介した。次はいつになるかわからない「芸劇eyes番外編」、第3弾は7月22〜25日。
文:徳永京子
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■いいへんじ 中島梓織インタビュー
■ウンゲツィーファ 本橋龍インタビュー
■コトリ会議 山本正典インタビュー
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